Archive for 8月 11th, 2012

<英語との付き合い—9

Author: 松山 薫

(103)<英語との付き合い 29>

英対話学習システムの構築10年計画

☆ 基本的な考え方

 次の段階は、前回述べた3つの原則の下に、自分達の体験を踏まえながら、英対話学習の
システムを作ることだった。
我々の経験則では、十分なinputがなければoutputは出来ないし、inputされたものが全て
outputできるわけでもない。従って、inputするものの量が、かなり大きくなるのは避けら
れないが、効率的なシステムを構築することによって、極力圧縮することは出来るだろうと
考えた。
inputとは英語の4技能でいえば、listeningとreading, outputはwritingと speakingである。これらを有機的に結びつけて学習することが、効率化のカギとなる。そこで、学校の英語学習で一応は基盤が出来ている(と思われる)reading の力をよりどころに、listening + reading → writing+speakingという学習の流れを考え、これをシステムとして構築することを目指した。

* システム:複数の要素が有機的に関係しあい、全体としてまとまって機能している要素の集合体。(広辞苑)
* 有機的:多くに部分が集まって一個のものを作り、その各部分の間に緊密な統一があって、部分と全体が必然的関係を有しているさま。(広辞苑)

☆ 英対話学習システムの具体的展開

上記の学習システムを具体化するため、次の4種類の教材を作成する。

① 用語集 ② 用語集を基盤とした段階的教本 ③ 用語集と教本の音声教材 ④ 教本を基盤とした学習用教材

① 用語集の作成

* 英対話のための基本語彙として選んだ4000語に、語法の説明や用例を付した用語集を作成する。
* この用語集の用例は、全て基本4000語によって作成する。
* 無味乾燥な単語の羅列ではなく、興味を持って何回も通読できるものを目指す。

以上の方針のもとに用例作成にはNHKの同僚だった藤沢光章氏に協力を依頼した。これだけ多数のしかも簡潔な用例を作成するには、30年の経歴をもつ藤沢氏の協力が不可欠であった。

② 教本の作成

準備編・基礎編・応用編・対話編 の4冊の教本を作成し、出版する。
各教本に、基本4千語度段階的に振り分け、各教本はその語彙の範囲内で作成する。

* 準備編: 学校で習った英語のうち対話に必要な部分の基礎固めをして、take offを目指す。( レベルは英検3級程度 )
* 基礎編: ニュースを系統的に理解するための基礎知識を英語で学ぶ。( 英検2級程度 )
* 応用編: 準備編、基礎編の基盤の上にreading 及び listening の一応の完成を目指す。( 英検準1級程度 )
* 対話編: 上記3教本の基盤の上に、writingの力を養成し、speakingへつなげる。 ( 英検1級程度 )

* 4000の語彙の使用語化を目指すため、用例は記憶に残るニュースを素材として、impactの強いものを作成することを目指す。各冊 800 合計 3200 を作成する。これらの用例は全て、用語集の基本4000語の語彙の範囲内で作成する。
* 同時に、3200の用例を通じて、英文の統語法(syntax)が自然に身につくように編纂する。
* 各教本は、40 UNITSで構成し、1年間で履修できるようにする。

教本の作成には、NHKの同僚であった高橋義雄、石川啓一両氏に協力を依頼した。これだけの条件(いわゆる“縛り”)を満たす用例の作成には、どうしても、卓越した英語力を持つ両氏の力が必要であった。

③ 英語の4技能のうち、特に日本人に不足しているリスニングの力をつけるため、教本にはそれぞれ用例を収録したカセット付す。英語の標準的な音韻とスピードになれるよう、カセットの録音は、NHK国際局の英語アナウンサー ダニエル・ウェブスター、ディック・パターソン、ジェイムズ・天願さんらにお願いする。

④ 学習教材(テキストとその音声)の作成

* 教本で予習した後、教室(或いは自宅)で学習するための教材を最新のニュースを素材として、毎週各教本につき2本ずつ作成する。 教材の作成者は、

報道された周知の事実を、基本4千語のうち各段階に割り当てられた語彙を用い、ラジオ英語ニュースのstyle (文体)で、5つのparagraph(150語前後)の教材に組み上げる という原則を厳守する。

音声の吹き込みは、英語の一般的な音韻とスピードになれるため、プロのアナウンサーではなく、複数の知人のnative informantsに依頼する。
* 各クラスの学習教材のレベルは、それぞれの教本を毎日1時間予習した場合、1本は70点程度、他の一本は50点程度の平均点が取れるよう配慮する。

学習教材の作成には、当面私と高橋氏が当たることにした。

☆ 以上を第1期の目標として、10年間で完成を目指したいと考えた。かなり欲張った目標であったが、同志達の協力を得て何とか上記のシステムを完成した後、彼等のNHK定年退職を待って、私は引退して貿易業に転身し、財政面からシステムを支えるつもりであった。(M)